教科書のデータ化はしていい?自炊できる範囲と手順
本棚2段ぶんの教科書と参考書を前に、処分する前に中身だけ残しておきたい。
教科書のデータ化で最初に要るのは、スキャナーよりも背を切り離す手段です。
無線綴じ(背を糊で固めた製本)の本はページの端が接着されているので、そのままでは1枚ずつ機械に送り込めません。
300ページの教科書なら読み取る紙は150枚ですが、作業時間の大半は裁断と、斜めに入ったページのやり直しに消えます。さらに、自分で買った本を自分でデータ化するのと、業者に代行してもらうのとでは、著作権法上の扱いが変わります。
本記事では、教科書のデータ化に要る道具・背を落として検索できるPDFにするまでの手順・裁断してはいけない教科書の見分け方を解説します。
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※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
教科書のデータ化でそろえるものは3つ、足りないと止まるのは裁断の手段
必要なのは、紙を1枚ずつにする道具と、それを読み取る機械と、できたファイルを置く場所の3つです。
このうち手元に無いと作業そのものが止まるのは、スキャナーではなく裁断の手段のほうになります。
ADF(自動給紙装置。原稿を自動で1枚ずつ送り込む仕組み)付きのスキャナーだけ買っても、背が糊で固まったままでは1枚も送れません。
背を切り離す道具は3タイプ
カッターナイフと定規だけでも切れますが、厚い本では刃が奥に入るにつれて切断面が斜めになり、ページの端に糊が残ります。
ディスクカッターやローラー式のカッターは切り口がまっすぐになる代わりに、一度に切れる枚数が限られるので、本を数十枚ずつの束に割ってから切ることになります。
レバー式の断裁機は一度に厚い束を落とせますが、重量があり、置き場所と収納場所の両方が要ります。
なお、薄い副教材や問題集にはホチキス留め(中綴じ)のものがあり、これは針を起こして外すだけで1枚ずつに分かれます。本棚の中身を見て、糊で固めた本と針で留めた冊子を先に分けておくと、裁断機を使う冊数そのものが減ります。
読み取る機械は裁断を前提にするかどうかで分かれる
ADF付きのドキュメントスキャナーは、裁断した束を載せれば連続で読み取れるので、冊数が多いほど時間の差が出ます。
一方でフラットベッド(ガラス面に1ページずつ伏せるタイプ)は裁断せずに済みますが、1ページごとに本をめくって置き直すため、300ページの本では現実的な作業量を超えます。
本を開いたまま上から撮るオーバーヘッド型も裁断が不要で、借り物や返却が必要な教科書にはこちらが向きます。
家庭用の複合機に付いているADFを使う手もあります。
追加の出費がない代わりに、読み取り速度と、紙が2枚いっしょに送られる重送への強さは専用機と差が出ます。
まず5枚だけ流してみて、重送と傾きがどの程度起きるかを確かめてから本番に入ってください。
保存先は読み取る前に決めておく
カラーで解像度を上げるほど1冊あたりのファイルは大きくなり、何十冊ぶんも積み上がるとパソコン本体の空き容量を圧迫します。
原本を処分する前提なら、保存先は最低2か所に分けてください。
外付けドライブだけだと故障でまとめて失われ、クラウドだけだと契約や期限の管理が残ります。
同じ部屋からビデオテープや写真も出てきて、まとめて1つのドライブに入れるつもりなら、媒体ごとに要る機材が違います。デジタル化を自分でやるのに要る機材で、媒体別の選び分けを解説しています。
教科書1冊をスキャンして検索できるPDFにするまでの手順
作業は、表紙を外す・背を落とす・束に分けて読み取る・抜けを確認する・文字を検索できる形にする、という並びになります。どの工程も、前の工程の雑さがそのまま後ろに出ます。
表紙を外して背を落とす
ハードカバーや厚紙の表紙は、本体と接着されている部分をカッターで切り離してから別に扱います。
背は、糊が付いている部分より数ミリ内側まで落とすのが目安で、糊が少しでも残っていると送り込みのときに2枚がくっついたまま流れます。
裁断機の能力を超える厚さなら、先に手で数十枚ずつに割ってから切ると、切断面が斜めになりにくくなります。
ここで失敗すると本文の文字が切れますが、紙は戻せません。初めての1冊は、処分してもかまわない参考書から試してください。
設定を決めてから束を載せる
読み取りの設定で迷うのは解像度と色です。
文字が主体のページは300dpi前後を目安とする案内が多く、細かい図版や数式の添字まで残したいなら、もう一段上げたほうが読みやすくなります。
色は、蛍光マーカーの引いてある教科書ならカラーを選んでください。
グレースケールに落とすと、ピンクや黄色の蛍光部分が濃い灰色になって文字が沈みます。
傾き補正と白紙ページの自動削除は、便利な反面で事故も起きます。白紙削除は、薄い印刷しかない扉ページまで消してしまうことがあるため、最初の1冊では切っておき、結果を見てから使うかどうかを決めると安全です。
ページの抜けを確認する
重送が起きると、ページ番号が2つ飛んだまま最後まで通ります。
読み取りが終わったら、ファイルの総ページ数と本の最終ページ番号を突き合わせ、合わない場合は番号を追って抜けを探してください。
この確認を省くと、原本を処分したあとで欠けに気づくことになります。
検索できるPDFにして名前を付ける
画像のまま保存したPDFは、見ることはできても語句で探せません。
OCR(光学文字認識。画像の中の文字を読み取ってテキストに変換する機能)をかけると、本文中の語で検索できるようになります。
処理には時間がかかるので、何冊もあるなら夜のうちにまとめて走らせる形にしてください。
ファイル名は、科目・書名・年度・巻数を並べた形に統一しておくと、あとから数十冊になっても目当ての1冊に届きます。あとで直すのは手間なので、最初の1冊を作った時点で命名の規則を決めてしまうほうが早いです。
読み取り時間より、裁断とページ確認が総時間を決める
読み取りそのものは、速い機械ならごく短時間で終わります。
仮に両面同時で毎分20枚を処理できるとすれば、300ページの教科書は150枚なので8分前後の計算です。
ところが実際に1冊を終えるまでには、表紙外し・分冊・裁断・束のセット・重送のやり直し・ページ確認・OCRの待ち時間・ファイル名付けが積み重なり、読み取り以外の作業が大半を占めます。
そして、この「以外の作業」は冊数に比例してそのまま増えます。
1冊で30分なら20冊で10時間で、休日2日を使ってもまだ終わりません。
1日で片づくと見込んで原本をまとめて裁断してしまうと、切った紙の山と未処理のページを抱えたまま平日に入ることになります。
冊数が多いときは、数冊ずつ裁断して読み取りまで終わらせる進め方にしてください。
本数と再生時間で総時間が決まるビデオテープとは、時間の読み方が違います。
テープは早送りできず実時間ぶんだけ取り込みにかかるので、見積もりの立て方そのものが別です。
テープ側の考え方はビデオテープのデジタル化とはで解説しています。
スキャナーを買わずに教科書をデータ化できるか
スマートフォンのカメラと書類スキャン系のアプリを使えば、機材を買わずに取り込めます。
撮った写真の四隅を認識して台形のゆがみを直し、PDFにまとめる機能が入っているものが多く、数ページだけ残したい場合には十分です。
原本を切らずに済むので、返却が必要な教科書や借りた本にも使えます。
向かないのは、1冊を丸ごとデータにする使い方のほうです。
1ページずつ撮って確認する動作が300回続くうえ、本を開いた状態では綴じ目に近い文字が内側に湾曲し、照明の位置によっては手やスマートフォン本体の影が紙に落ちます。
ページを押さえるために指が写り込むことも起きます。
どうしても1冊を撮るなら、本を固定できる台と、左右から均等に当たる明かりを用意してから始めてください。
それでも、裁断して自動給紙で流した場合と比べると、傾きと明るさのばらつきは残ります。
手元にスキャナーが無く、原本も切りたくなく、冊数が多いという3つが重なった場合は、全部をデータ化しようとせず、必要な単元だけ撮るほうが現実的です。
データ化した本の仕上がりで妥協が要るのは、マーカーの色とルビの潰れ
スキャンで増える情報はありません。
紙に印刷されている以上のものは出てこないので、もとの印刷がかすれているページは、解像度を上げてもかすれたまま残ります。
期待と現実がずれやすいのは次の4点です。
- 蛍光マーカー・色鉛筆の書き込みは、グレースケールで取ると文字ごと沈むことがある
- 小さなルビや数式の添字は、解像度を下げると潰れて判読できなくなる
- 写真や網点の図版に、画面上で縞模様(モアレ)が出ることがある
- 見開きで1枚になっている図表は、裁断すると左右が別ページに分かれる
OCRの精度も完全ではありません。
縦書き・ルビ付き・数式の多いページでは誤認識が出やすく、検索しても該当箇所が出てこないことがあります。
検索できる状態になったからといって、本文がすべて正しくテキスト化されているわけではないと考えて使ってください。
裁断した本は、元の形には戻りません。
製本し直すこともできますが、それは別の作業で、手間も費用も追加でかかります。
背を落とす前に、その1冊を今後も紙で開く場面があるかどうかを確かめてください。
裁断してはいけない教科書と、代行業者に頼めない理由
そもそも切れない本がある
学校や勤務先から貸与されていて返却が必要な教科書、図書館で借りた本、人から借りた参考書は、所有者が自分ではないので裁断できません。
絶版で買い直せないものも、失敗したときに取り返しがつかないため、裁断を前提にしないほうが安全です。
この場合は、オーバーヘッド型のスキャナーか、ガラス面に伏せるフラットベッドを使ってください。
書き込みそのものを残したい1冊も同じです。
切断面が本文側に数ミリ食い込むと、余白に書いた文字が端から欠けます。
失敗が許されない1冊は、時間がかかっても切らない方法を選んでください。
自炊代行に出せるかどうか
著作権法30条1項は、私的使用を目的とする場合に「その使用する者が複製することができる」と定めています。
自分で買った教科書を、自分で、自分が読むためにデータ化するのはこの範囲の行為です。
ところが業者に送って代わりにスキャンしてもらうと、複製しているのは本の持ち主ではなく業者だという見方になります。
書籍の自炊代行をめぐる訴訟では、知的財産高等裁判所が、複製を行っているのはユーザーではなく業者であると認定し、30条1項の適用を否定して代行業者の控訴を棄却しました。
一審も同じ判断です。
教科書も書籍である以上、同じ構図に置かれます。
違法かどうかの最終的な判断は個別の事情によって変わるので、業務で使うなど判断に迷う事情があるなら、弁護士など専門家に相談してください。
データにしたあとの扱いにも線があります。30条が想定しているのは個人や家庭内という限られた範囲での使用なので、クラスの仲間やSNSで配ると、私的複製の範囲を超えると考えられています。
なお、業者に頼めないのは市販の書籍だからであって、自分や家族が撮ったビデオテープ・写真は著作権者が本人側なので、ダビング業者に出してかまいません。媒体ごとにいくらかかるかはダビングとデジタル化の料金相場で解説しています。
よくある質問
教科書を裁断せずにデータ化する方法はありますか
本を開いたまま上から撮るオーバーヘッド型のスキャナーか、ガラス面に伏せるフラットベッド、またはスマートフォンの書類スキャンアプリを使えば切らずに済みます。
ただしどれも1ページずつ操作するため、1冊を丸ごと取り込むと時間がかかります。
返却が必要な本や、買い直せない本に絞って使うのが現実的です。
スキャンした教科書を友達と共有してもいいですか
やめてください。
著作権法30条が認めているのは個人や家庭内その他これに準ずる限られた範囲での使用で、学校の仲間に配ったりSNSに上げたりするのはその範囲を超えると考えられています。
自分の端末で自分が読むための複製にとどめてください。
自炊代行業者に教科書を送ってもいいですか
市販の教科書や参考書は、代行に出すと複製の主体が業者になり、私的複製の規定が適用されないという裁判所の判断が出ています。
自分でスキャンするか、紙のまま残すかの二択で考えてください。
判断に迷う事情があるときは専門家に相談してください。
解像度は何dpiにすればいいですか
文字が主体のページは300dpi前後を目安とする案内が多く、細かい図版や数式を残したい場合はもう一段上げる形になります。
上げるほどファイルは大きくなり、OCRの処理時間も伸びます。
1冊を本番の設定で取り込む前に、数ページだけ試して画面上で添字やルビが読めるかを確かめてください。
書き込みやマーカーはそのまま残りますか
カラーで取り込めば色は残りますが、グレースケールに落とすと蛍光マーカーの部分が濃い灰色になり、下の文字が読みにくくなることがあります。
鉛筆の薄い書き込みも、明るさの設定によっては飛びます。
書き込みを残したい教科書は、カラーで1ページ試してから全体を流してください。
裁断したあとの紙はどう捨てればいいですか
紙の分別区分は自治体によって異なり、表紙の素材や金具の有無で扱いが変わることもあります。
お住まいの自治体の案内で確認してください。
裁断した束は量がまとまるので、回収日と出せる量も先に見ておくと置き場所に困りません。
まとめ
教科書のデータ化は、スキャナーを用意すれば進むものではなく、背を切り離す手段をどうするかで作業全体の形が決まります。
裁断して自動給紙で流せば速い代わりに本は戻らず、切らない方法を選べば原本は残るぶん時間がかかります。
そして市販の教科書は代行業者に出せないため、やるなら自分の手で進めることになります。
冊数が多いときほど、読み取りそのものより裁断とページ確認が総時間を押し上げます。ぜひ本記事の手順と、裁断してはいけない教科書の見分け方を参考に、処分してもかまわない1冊で試してから残りに進んでください。
